わたしは14階建て集合住宅の9階に住んでいる。1階に全棟の郵便ポストがあり、以前は新聞を購読していたので毎日開けていたのだが経済産業省での勤めを辞めるのと同時に新聞購読もやめた。それからは「毎日開ける」という規則性がくずれ、外出のついでに開けるということになった。社会の第一線から身を引くとほんとうに重要な郵便物はかぞえるほどであとは宣伝や勧誘のためのチラシかDMばかりである。一枚モノのチラシも煩雑ではあるが厄介なのはDMのたぐいだ。それも女性向けの服やら化粧品やらがほとんどで、光沢のある上質な紙をつかい、まるで商用雑誌のようで分厚く、重い。荷物をもっているときなど回収をあきらめることもしばしばある。
わたしにはまったく不用なのでその場で捨てたいくらいだが、あいにくポストの周りにはゴミ箱がなく、かつ妻が見るのを楽しみにしているモノもあるので自宅まで持ってこざるを得ない。DMは外側がたいていビニールで覆われているのでまず開けるたびにゴミの発生となる。本体のほうも妻がひととおり目をとおしたあとは資源ゴミとなって積まれるのだが、何しろ発送頻度が早いのであっという間に崩れそうになる。したがって頻繁にヒモでしばって資源ゴミに出すのだが、回収のときと同様にこれがなかなか手ごわい。
前述のように一冊が充分に重いので、見た目で「少ないかな」くらいでないと持ち上げられなくなる。かつ上質な光沢紙ゆえ滑りやすい。高さにして15~20センチ程度が限界である。むすぶヒモも一重ではこころもとないので二重にする。手間と時間がかかる割りにはたいした数が運べず、おそろしくコスパが悪い。妻は眺めたあとに注文をしている様子もないので発送側にとっても100%コストである。回収、梱包・廃棄するわたしの怒りと手間をかんがえると、だれも幸せになっていない。資源のたいせつさを訴えるいまの世にあって、にれらDMは逆行しているといわねばならない。
ついでにいっておくと、妻はリアルに買い物はせず、もっぱらスマホでネット購買している。だったら最初からDMなんて見るなよ!といいたいのを、家庭の平和のためにグッと飲み込み消化不良になるわたしなのであった。
やはりDMで幸せになるものは、いない。