2017年 08月 30日
デジタル・ディバイドの復讐
iPhoneを買い替えた。
いままでは4Sの64ギガを使用していたのだが、ぼう大な量の音楽とフランス語授業のときにボイスレコーダーとしてまいかい3時間のレッスンを何年分も録音していたためとうとうメモリが不足してきたのである。映像と異なり音声データはひどく重たい。
わたしはいわゆるアプリケーションはダウンロードしておらず、いま書いたようにミュージックプレイヤーとボイスレコーダー、そしてメールのやり取りくらいにしか使用していなかったのでとても「スマート」とは呼べないのだが、ぎゃくに電車のなかやスタバなどでスマホから目を離さないひとたちはいったい何をしているのかわたしのほうが尋ねたくなってしまう。
そんなわけだから買い替える動機としてはいたって消極的なのだが、なにしろメモリがいっぱいになってしまってこれ以上曲をいれられないからやむを得なかった。何年も4Sの大きさに慣れているので店舗にいきiPhone7をみせられたときにはにぎりメシの上にネタをのっけた鮨をみるようで、ひどく滑稽な感じがした。わたしはとにかく大容量のものが欲しかったから256ギガが欲しいというと「256ギガは割り当て制になっているので納期がハッキリいえない」というではないか。
「128ギガなら在庫がある」というので何回もショップにくるのは面倒だから「じゃあそれでいいですから」ということで最新の128ギガを購入して帰ってきた。自宅のパソコンにいままでどおり接続すればiTunes側で端末が代わったことを認識して同期するから大丈夫だ、とおしえられた。
ずいぶん前に自宅のパソコンがどういうわけかダウンしてしまいデータがOSもろともすべて消えてしまうということがあった。もともとITのリテラシーは高くないのでろくに考えもせずiPhoneを接続したらパソコン側のデータが消えているものだからわたしが厳選した楽曲がiPhoneのほうも同期して消えてしまった。あのときの絶望感は深刻で、しばらくのあいだ焦点がさだまらない眼で中空をボンヤリながめていた。たぶん口も半開きだったろう。なにしろiTunesにおとしこんだ曲はひとから拝借したCDや図書館で借りたCDもあって、ざっくりではあるが4,000曲ていどiTunes内にあったからである。わたしの精神の支えみたいなものだった。
たまたまiPhoneをもつまえに音楽プレイヤーとしてつかっていたiPodがそのままの状態で保存してあったので、iPhoneに収録されている直近のライブラリーと同じではなかったけれど、7割ていどは重なっているのでアップル社は著作権の問題から公表していないがiPod ⇒ iTunesへの逆転送という裏ワザをしらべ実行した。
祈るような思いで作業をすすめるとiPodのデータが空っぽになったiTunesへと移った。冗談ではなくひとりで手をたたき「やったぁ!」と絶叫してしまったのだった。